希望と喪失 Hope returns to sadness
- 22 時間前
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その樹を見かけたのはとある町のはずれを車で移動していた日のことでした。
埃で少し汚れたカーウィンドウから眺めた古い桜の樹は、
午後の日差しを受け、柔らかなピンク色の光を自ら放っているようにも見え、
わたしは車を降りてその木に少しだけ近づき、持っていたカメラのレンズを向けたーーすると、
木の足元にある芝桜が、わたしも撮って欲しいと言わんばかりに集まってきて、その一帯をよりピンク色に染めてしまうようにも見えるから不思議でした。
木自身は昔からこの野原に立っている古木そのもの、といった感じでしたが、
満開を迎えそろそろ終わりかけの花々の、その小さな息吹きがカメラレンズに反射し
桜の木の中心に太陽を潜ませているような、そんな気持ちになる。
すると今度は昔見た懐かしい景色が脳内にスッと現れ、消える。
そしてまた、思い出を一つ増やしたような気持ちにもなる。
そういえば、昔他の町で見た桜まつりの写真は、アルバムから消えてなくなってしまった。
自分で消したのかどうかすら忘れてしまい、もうどうでもよくなった写真の記憶は、
頭の片隅にわずかな傷痕のようなものを残している。
わたしはそんな脳内ゲームをひとりで繰り返し、そしてこの記憶にタイトルをつける。
「いつかの桜の樹」
それはたった数分前に、何となくこの写真につけた名前でした。



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